アクロージュファニチャー

家具工房 アクロージュ ファニチャー 満10年を想う/岸邦明

2015年3月16日

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あらためまして、無垢の家具工房アクロージュファニチャーの岸です。

2005年3月に家具工房を開いてから、お陰さまでちょうど10年が経ちました。

「10年やって、やっとここまでか…」と言うのが正直なところです。

「ここまで来ても、こんなものか…」と言う気持ちもあります。

 

建築系でも美術系でもなく商学部卒で、20代は物販系の会社を営んでいた私が、

20代後半に生業を真剣に考えた末に思い立ったのが、ものづくりであり、家具工房でした。

中学生の美術以上の経験のないものが、専門的なものづくりの世界に入る。

「何を考えているのだろう」と周りの方たちには見られました。

それでも当時の私は「チャレンジしつづける人生を送りたい」と意に反していなかったように思います。

 

家具製作を学ぶ職業訓練校に行き、孤高の実力者の森戸雅之師匠に学び、

3年後には埼玉県新座市で工房を始めました。

デザイナーでも工芸家でもなく、木を扱う僅かな知識と技術しかない私は、

「いいものを作りたい」「お客様に喜んでほしい」という想いしかなく、

コンペに出たり、個展を開いたりすることもなく、

ただただ目の前のお客さまに喜んでもらいたい一心でやってきました。

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「社会人として、少しは役に立ちたい」との想いで、「木工教室」を開催し続け、

「お弟子」も育てようとして来ました。

「人として、少しはしっかり生きていきたい」と想い、結婚し、ふたりの子供にも恵まれました。

4年前の震災の頃には母親を介護の末に看取りました。

 

「家具工房を生業にする」

当初の目標には達しているのかも知れません。

ただ、しっかりした社会人にも、しっかりした人にも、まだなれていません。

毎日全力で取り組んでいるのですが、想うようになれていない自分がいます。

 

「ものづくり」

この世界の難しさは図り知れないですね。

20代に営んでいた物販は、良い商材に出会う努力は大変なものでしたが、

一度売れれば、一日で百万単位の利益をひとりで作ることもできました。

「自分は仕事ができる」などという慢心も生まれました。

それが「つくる」という過程から始めると一変しました。

デザインを考え、材料を探し、加工する場所や機械を用意し、加工技術を何年も掛け身に付け、

お客様が満足できる価格に抑えられるだけの加工スピードも身に付け、

自分だけでなく、お弟子もできるように整え、生活できるだけの注文を取り続け、制作し続けなくてはなりません。

さらには、納めた物が壊れることなく、満足し続けられるクオリティーでなくてはなりません。

この「ものづくり」の世界を垣間見た今の私は、あらゆる産業でまっとうに「ものづくり」をしている方々に

敬意を払わずにはいられません。

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「無垢家具の制作」

ものづくりのなかでも、木の家具の世界、さらには無垢の家具の世界は大変でした。

材料となる木が一本一本、さらには一枚の中でも場所によって違うからです。

同じ一枚であっても、木目が違い、色が違い、素性が違います。

いつどこで伐採され、どう挽かれ、どう乾燥してきたかでも作り方を変えなくてはなりません。

また無垢の木は家具になった後でもサイズが変化します。

しっかり乾燥した材でも、0.5%程は一年の間で伸縮を繰り返しながら、

10年という単位で徐々に小さくなっていきます。

0.5%と言うと僅かと感じるかも知れませんが、90cm奥行のテーブルで3~4mmの伸縮があります。

自動車を作るのに一台一台ボディーの素材が違ったり、できたもののサイズが変わるとしたらどうでしょうか。

スチール・真鍮・ステンレスと素材が変わっていったり、素材が同じでも、冬と夏で厚みが大きく変化したら。

少し大げさな表現ではありましたが、無垢の木を使い家具をつくることは、現在でも産業用ロボットにはできません。

世界中見ても、今でも無垢の家具制作の現場は職人が主人公です。

だからこそ、私のようなものが家具をつくるチャンスを与えられているのですが、

効率化を図れない苦しみが無くなることもありません。

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数年前、妻が私のことを「セミみたいね~」と言いました。

地上に出ることもなく、仲間同士で交わることもなく、じっと何年も地面の中で過ごします。

怒るよりも「うまいこというな~」と感心してしまいました…

昨年末に、都市銀に勤める学生時代の友人に会い、飲みました。

「最近どう?」と聞かれ、

「時間が一番ほしいな~、金銭的にも余裕は無い」と答えたところ、

「多くの経営者に会って来たけど、能力のない人に限って、そう言うんだよ」と一蹴されてしまいました。

同じく、都市銀に勤める先輩と飲みに行った際には

「どうしたいんだい?」

「良い物を作って、すばらしい家具工房があると思われたい」と答えたところ、

「何きれいごとを言ってるんだ。しっかり稼いで、家族を幸せにすることができなくてどうする!」

と叱られてしまいました。

 

10年掛け、やっといろいろなことが「かたち」になり、できるようにもなってきました。

しっかり地上に出て、長生きしなくてはなりません。

4月からまた新たなメンバーも加わります。

飛躍の新年度にしなくてはと強く想います!

岸邦明

 

追申

写真はオリジナル家具として作ったものです。

どれも制作から1年以上が過ぎてしまいました。

日々の忙しさの中、写真を撮る時間すら取れず、HPにUPすることもできずにいました。

「時間が…」なんて思っている私は、まだまだ社会人としても人としても未熟です。

先日やっと一部の写真を撮りました。

正式にUPするまでには、また「時間」が必要で、ふとこんなブログを書いてしまいました。

でも、毎日が充実し、精一杯生きています!

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