アクロージュファニチャー

平成30年 明けましておめでとうございます!/岸邦明

2018年1月6日

明けましておめでとうございます。

工房主の岸邦明です。

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神楽坂に移転し2年目になっています。

思い起こすと2年ほど前…

工場長の淺井に「胸を張ってアクロージュファニチャーに働いていると言えるような工房にしたい」

と言われました。本人からすると何気ない一言だったかも知れません。

しかし、お弟子をしっかりと育て、工房全体としての生産力や多様性を高めたいと思っていた私は、

何とかそうしたお弟子たちも望む工房に一日でも早くしていかなくてはならないと動き始めました。

まずは、勤務体系や給与体系を見直し、今でいう「ブラック企業」と言われないようにしました。

 

私たちのような長い年月によって得る技術を基本として行う仕事は、かたちにするまでの道のりは

簡単ではありません。

端的に言えば収入的なものです。

家具と近しいところでは芸術家・伝統工芸士など、

人気のある職業だけど実は大変なのが弁護士・医師・建築士など、

あこがれの存在のサッカー選手・野球選手など、

いわゆる成功した人になるための道のりは大変なものなのだと思います。

今の労働基準法に則れば、野球選手が従業員なら、一人バットの素振りをする時間も勤務時間で、

給与を支払わなくてはなりません。

技術職におけるそうした時間は膨大であり、その多くは給与に反映されてきませんでした。

ただ、多くの人気ある技術職はトップの技術や表現力を身につけた場合、それなりの大きなリターン、

つまり収入が得られます。そこを目指し、多くの人は努力し続けているのかと思います。

 

それが、こと木工となると正しいリターンが付いて来ることが、まずありません。

そのため多くの木工は経営的、営業的な面に力を入れ、販売・売上を伸ばし、経営者として利益を得ることを

目指していきます。

真面目に木工に取り組み、誰よりも良いものをつくる職人がより評価されるという一見当たり前のことが、

当たり前でないのが木工です。

高い技術があり表現力もある憧れの木工の諸先輩方が実は収入面では苦しんでいるという現実を見てきました。

真面目に取り組む木工は労働力と時間の塊です。材から考え始めれば、何年も掛け一つの木工品は生み出されます。

そうした精魂込めて作り上げたものと、海外で何となく作り上げたものが、同じ木工品として使われます。

そこには大きな価値の差があるのですが、その差が評価されないのです。

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ここまで読まれた方は「伝える努力が足りないんじゃないの」と言うかも知れません。

そうかも知れません。ここでやはり営業力が出てくる訳です。

高い技術や表現力を持った職人を見せるシステムがあり、

それを求める観客や患者、お客様が来るようにしなくてはなりません。

32歳で木工職人の世界に入り、「木工職人の世界にはこうしたシステムがない」ことを知りました。

だからこそ面白いのかも知れませんが、私の試行錯誤は続きます…

 

話しを戻して…、給与体系を見直しましたが、それを払い続けるだけの売上がありません。

私やお弟子たちは皆、東京出身です。「良いものを作っている」と言う自負はありました。

ただそれを正しく見せるシステムが必要でした。

「そうだ東京に出よう!」

こうして東京に出て2年目になりました。

正直なところ、当初の計画通りには行っていません。

根っからの楽観主義者なので、計画はいつも楽観過ぎるのかも知れません…

とは言えこの1年は色々と新たに試みました。

その挑戦はまた次回に!

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