煤黒仕上げの文机&飾棚の制作
2015年2月24日
新築の玄関正面の壁に取り付ける飾棚を制作しました。
下見にうかがうと、既に建築時の棚が付けられていましたが、ご夫婦は「ちゃち過ぎて嫌になっちゃうんだよね」と。
来店当初「偶然前を通ったんだけど、ここは通り過ぎちゃいけない気がして」と入って来られました。
ショールームに立て掛けられている材を見て回り、個性的なソメイヨシノの一枚板を選ばれました。
「この節や窪みをそのまま活かしてほしいです」
「赤いのが嫌いで、なるべく黒くしたしてほしいです」
「艶もあまり好きじゃなくて…」
かなり明確に好みが決まっていました。
「飾棚のためだけに一枚板を切ってしまうのも難しいので、反対側を文机などにしてはいかがですか」
「それもいいですね~」
取り付けるお客様のご自宅に一枚板を持ち込み、カットする位置やサイズを一緒に決めました。
制作自体は通常通りに行います。
今回の見せ所は塗装になります。
木目を殺さないながらも濃く塗装できるステインを使用し、何色も塗り重ねていきます。
何日も掛け、色合いをお客様の好みにまずは近づけます。
問題は艶です。塗り重ねていくうちにどうしても目立ってきます。
通常なら、艶消しのクリアを最後に塗るのですが、その濁った透明な塗装もお客様は「好きじゃない」とのこと。
イメージを言うならば、長年、囲炉裏の上で煤けてマットに黒くなった梁の風合いですが、
木目が見えるようにし、洋服に色移りしないようにもしなくてはなりません。
なかなか強敵な目標です。
塗膜が十分できたところで、さらに塗装しながらバーナーで表面を焼いていきます。
塗料を若干炭化させつつ、焼き付け塗装のように強度も与えていきます。
その後、シンナーで塗装を少しずつ剥がし、木目が透けて見える状態にします。
塗り加減、あぶり加減、拭き取り加減、全てが感覚勝負です。
無事取り付けた飾棚です。
「カッコいいですね~」「すごいですね~」「ここに座って一日中酒を飲んでいたいな~」
ご主人に満足いただけたようで、ホッとしました。
合わせて制作した文机です。
こちらは奥さまが「これが来るのをずっと楽しみにしていたんです」
「木の表情がすごく素敵です」「ずっと撫でていたくなります」
お二人ともに大変満足いただけたようで、
「この扉と障子戸も同じように塗装してもらえますか」
職人冥利に尽きますね。