オーダーメイド家具　　執筆用テーブル【ブラックウォールナット】無垢 3枚ハギ

作家でいらっしゃるご依頼主様より、執筆用テーブルのご注文いただきました。

W1200mm×D600mm位のサイズで4本脚、この先何十年と使えるとにかく頑丈なもの、というご希望です。

樹種はお任せということで、部屋のお写真をいただき、雰囲気の合うブラックウォールナットをご提案しました。

当初は全く違うデザインをご希望されていました。

広い天板で2本のシャープでカッコいい脚、そして頑丈さを兼ね備えたもの。
実際に使う製品としては中々難しいご希望です。
カッコ良さと強度は相反する要素を持っています。
カッコ良さを追求すればシャープになるが強度が落ちる、強度を追求すれば野暮ったくなり、カッコ良さが半減する。

まず強度的に耐え得る、デザイン的にも許容範囲なラインで設計したものをご提案させていただきました。
それを叩き台に、あらゆる可能性と要素をひとつひとつお伝えし、2，3か月に及ぶ打ち合わせを重ねました。

その中でご依頼主様の知識も増え、考えも精査されて行き、何が自分にとって重要で、本当に必要な要素なのか、改めて一緒に考え直すことになりました。

最も重要な要素は「仕事をするためのテーブル」である、ということ。
ご依頼主様の中で「シンプル」で「とにかく頑丈なもの」、という結論に至りました。

構造は天板と四隅脚。
引き出しなど、その他装飾は一切なくし、執筆に専念できるシンプルなデザイン。
頑丈さを持たせるため、厚みのある材で制作します。

これを叶える材を探しに製材所を巡ります。

所々に縮み杢の入った面白い材が手に入りました。

加工前にご依頼主様に材をご確認いただき、問題なければ加工を進めます。

塗装するとより木目の濃淡がはっきりとし、縮み杢も活きてきます。
今回はシンプルなデザインですが、見る角度で表情の変わる木目がひとつの意匠となっています。
これが無垢材の家具の特徴でもあります。

脚は専用金物を使って強力に固定します。
掘り込み加工などが必要になりますが、使用時は金属同士でジョイントされるので、長い年月が経ってネジ周りが崩れて脚が揺れる、といったことが起こりにくいのが特徴です。
一方、収納時は簡単に分解することもできます。

オリジナルの鉄製反り止めを裏面に取り付けています。

厚みもあることから、サイズの割にしっかりとした重量があります。
仕事中でも安定感があるので、落ち着いて作業が出来そうです。

納品後、ご依頼主からメールをいただき、「素晴らしいもので仕上がりにとても満足しています」「要望に沿っていただき、プロのセンスを取り入れて作っていただけて本当に良かった」と嬉しいお言葉をいただきました。

お客様のご希望をお伺いし、それに対して木工のプロとしての意見はしっかりとお伝えさせていただきます。
永く愛用していただくために、家具として成り立たない箇所は、ご納得いただけるようひとつひとつ丁寧にご説明いたします。
その中で、今回のようにオーダーメイドの本質に立ち返って考えた結果、当初とは全く異なるデザインに行きつくこともあります。
それが初期のクオリティを下回ることは無く、結果として長期の満足感に繋がります。

オーダーメイドという簡単ではない決断をしていただいたお客様が、後悔なく、頼んで良かったと製品を見るたびに思っていただけるよう、最善の答えを一緒に探していきます。

[制作担当 淺井]