アクロージュファニチャー

源兵衛・江戸時代の古い鉋/日本地・玉鋼/岸邦明

2013年7月29日

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大工道具と言うものは実に奥深く、楽しいものです。

「家具職人を生業にする」と決めたとき、「道具のことを良く知らなくては」と思い、

道具屋に通い、店主や腕の良い職人方から道具の大切さを学びました。

その中で、僕の心に強く響いたのが「道具が仕事をする」という言葉でした。

「君が切ったり、削ったりする訳ではないだろ?」

「君は道具に手を添えて、仕事を手伝っているに過ぎないんだよ」

確かにそうだ!この瞬間、僕は道具のことを真剣に知りたいと思うようになりました。

 

訓練校や丁稚時代、刃物を研ぐ練習をし続けながら、道具がなぜそうした形をしているのかを学びました。

多くの道具を仕込み、使い、ときには作ったりもしました。

僕は道具を通して、職人気質やデザインを学びました。

それはとても楽しく、ワクワクする経験でした。

 

独立し、日々の制作に追われるようになってからは、道具を楽しむ機会は減っていきました。

今、自分の生活の中で「道具について学び合う時間」は無くなっています。

「そんな時間をまた持ちたい」と最近思い始めていました。

ふと思ったのが、このブログでした。

何かの出会いがないかと思い、僕が使用している道具について定期的に書いてみようと思います。

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この鉋は僕が使用している中で最も古いものになります。

江戸時代、関西の有名な鍛冶屋・源兵衛のものと思われます。

グラインダーで削られていますが、特徴ある鉋頭の形状、

通称「四つ目の源兵衛」と呼ばれる理由となる、四つの刻印が残っています。

地金は日本地、鋼は玉鋼です。

鋼がとても薄いのも源兵衛の特徴です。

 

使用当初は鋼切れしないよう裏出しを繰り返し、なんとか錆を取り除きました。

薄い鋼が無くならないよう、だましだまし使用しています。

刃物の研ぎを勉強しているとき、どうしても研いでみたかったのが江戸時代の鉋でした。

日本地&玉鋼、砥石の王様・本山戸前との相性が抜群と聞くが、どう言ったものなのだろうか?

使い始めたとき、現代の鉋とは全く違うことに、独り驚いていました。

戸前に吸付くような研ぎ心地、力を入れると止まってしまいます。

「最後の仕上げは力を抜け」と言われているのはこのためなんだ~と実感。

「良い刃とは研ぎ易いものだよ」と言われてきたのも、別次元の研ぎ易さに、あ~実感。

教わってきた、いろいろなことを実感することができた、有難い鉋です。

 

食い付きや仕上がりはベストとは言えません。

確かに甘切れですが、長切れではありません。

昔の鉋だけに、やはり針葉樹に向いています。

僕が扱う広葉樹には少し負けてしまいます。

 

ちなみに、同じ鍛冶屋でも玉鋼の鉋は特に性能に差があるようです。

使われずに刃が残っているのは、硬過ぎて使えなかった場合が多いとか。

初代の物と思われる、この源兵衛の鉋刃はここまで使われてきただけに良い方なのでしょうね。

使ってみたい方はお声掛けくださいね!

岸邦明

 

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