アクロージュファニチャー

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オーダーメイド スピーカー【イタヤカエデ、ブラックウォールナット】無垢

【樹種】フロントパネル:イタヤカエデ(無垢材)
    本体:ブラックウォールナット(無垢材)
【サイズ】W340×D420×H1000

弊社のホームページをご覧になり、使ってみたいスピーカーのユニットに見合う本体を制作してほしいというご依頼を頂きました。
大まかな寸法と素材が無垢材という以外は特にご希望は無く、デザインをご提案する所からのスタートです。

スピーカーは最終的に音を出してみなければ、デザインとして正しかったかどうか分かりません。
単発でのオーダーメイドの場合、試作をしてから、ということは難しく、特に無垢材の場合、樹種や板の特徴が音に与える影響は大きく、全く同じ材がないため、過去の知識や経験から推測していかなければなりません。
信頼関係の下、専門家の方々にもアドバイスを頂きながら、制作を進めていきます。

まずユニットの現物を取り寄せ、既存のスピーカーに取り付けて音を確認します。
置かれる部屋の状況やユニット推奨の容積等を考慮し、寸法とデザインを決めていきます。

定期的な打ち合わせの中で、お客様の好みや目指す音の方向性などを確認、樹種の選別に入ります。
今回は、シャープで透き通った芯のある音質を持つイタヤカエデと、ハスキーで温かみのある音質のブラックウォールナットを使用します。
両方の特徴を掛け合わせることで、バランスの取れた音を目指します。

厚みと幅のある貴重なブックマッチ材(イタヤカエデ)から、特に質の良さそうな箇所を前板にします。

今回は奇をてらわず、スピーカーらしい形状にしました。
長い歴史の中でこのような形状が多いのにはやはり理由があります。
サイドの内部は曲面に削り込み、音の反響を複雑にし定在波対策を施します。

サイドは内部の曲面に合わせて外側も削り込み、フロントパネルには左右に曲面からなる段欠きと天地側板との境にスリットを設けました。
ラインを強調させることで、見た目の野暮ったさを軽減させます。

脚は本体の形状に合わせた4本脚。
ご依頼主様が音楽を聴く時の座るソファや距離から、最適な高さを設定します。
太すぎず細すぎず、「軽い低音」を意識した設計です。
本体との間には金属のインシュレーターをかませ、金属的な音質を加味します。

四隅には隅木を取り付け、できる限りカドを無くします。
最終的には内部全体を紙製卵パック状の素材で覆っていきます。

今回のスピーカーの最大の特徴は容積が変えられるというものです。
無垢材のスピーカーは楽器と同様、鳴らせば鳴らすだけ音が良く鳴るようになります。
しかし場合によっては鳴り過ぎて音がぼやけてくる可能性もあります。
その時に容積をコントロールすることで、理想の音で永く音楽が楽しめるのでは無いかと考えました。
地板を二重構造にし、構造を工夫することで中板を自由に動かすことができるようにしました。

当工房としても初の試みでしたが、弊社の考えにご賛同いただき、ご依頼主様のご理解とご協力のもと、今回大きなチャレンジをさせていただきました。

スリットがあることで全体に表情が出ました。
縮み杢が全体に表れているフロントパネルは、塗装をして艶感を持つことで、一層きれいに際立ちました。
無垢材ならでは、同じ表情はふたつと無い、唯一無二のスピーカーです。

付属のカバーネットにもマットブラックの塗装を施し、上品で高級感のある雰囲気を活かすためひと手間を加えました。

納品前に工房内でエイジングを兼ねて試聴を行います。

デザイン、構造、材料、これまでの想定に対する正解がここで初めてわかります。
鳴り出し一発目。
感想は「想像を上回った」でした。

あくまでも工房主個人の見解ではありますが、少なくとも完成までの不安は一掃され、自信を持ってお渡しできるスピーカーになりました。
高音、解像度は申し分なく、低音はエイジングの中で改善されていくと思われます。

ご依頼主様のご期待に最大限お応え出来る仕上がりです。

ここから先は、ご依頼主様自らが理想の音を作り上げていく過程です。
検証と調整を繰り返して、日々変わっていく音を楽しみながら、木と音に向き合う時間を有意義に感じていただけたら幸いです。

当工房の試みに快く賛同頂いたご依頼主様に、この場を借りて改めて厚く感謝申し上げます。

[制作担当 淺井]

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